下川町地域共育ビジョン-子どもが誰ひとり取り残されず、全体が大きな家のような教育のまち-

【開催報告】8/27~9/3 2024年春期インターンシップ体験日記

2024/09/26実施報告

2024年8月27日〜9月3日の7日間、下川町教育委員会のインターンシップを実施しました。インターンシップでは、下川小学校、中学校、下川商業高校の授業に参加したり、うどんまつりの中学生ボランティアをサポートしたりと様々な活動を行いました。
実際の参加者が期間中に撮影した写真を交えながら7日間の様子を紹介します。

<インターンシップ参加者>

松井愛花(あいか)立命館アジア太平洋大学サスティナビリティ観光学部2年【奥中】
鈴木悠栞(ゆか)立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部3年【右前】
雨森貴史(あめ)立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部3年【左前】
鹿嶋奏沙(かなさ)立命館アジア太平洋大学アジア太平洋学部4年【右奥】
府川颯太(ふかふか)北海道大学 大学院教育学院1年【左奥】


<活動一覧>
8/27 午後 オリエンテーション・町内案内
8/28 午前 下川の人ツアー
    午後 下川小学校1年生 生活科
8/29 午前 下川中学校2年生 総合 センパイ進路トーク
          午後 うどん祭りボランティア 準備
8/30 午前 下川の森ツアー
          午後 下川商業高校3年生 課題研究
                   森林環境教育 森の生活 
8/31 終日 うどん祭りボランティア
9/1   休日
9/2   終日 下川小学校・中学校 1日防災学校
9/3   午前 活動振り返り

【8/28 午前】 下川の人ツアー

活動2日目は下川町にお住まいの小峰さんと富永宰子さんを訪問し、お二人の暮らしついて学びました。最初にお会いしたのは小峰さんです。小峰さんは地域から愛される「ハナちゃん」というどさんこ馬と共に暮らしています。今回私たちは乗馬と引き馬に挑戦する機会をいただきました。特に引き馬は私達にとって非常に思い出深い体験となりました。引き馬は一本の手綱を使い、一緒に歩くというシンプルなものです。しかし、「真っすぐに進むべきか?」「今曲がっていいのか?」などと迷っていると、その感情がすぐにハナちゃんへ伝わり、気を散らしてしまいます。馬と「心の対話」を通じて、意思を通わせることの難しさを実感しました。そして何より、自分の意思と真っすぐに向き合い行動するという、ふと忘れがちですが、人生で大切な教えに再び気付くことができました。

次は、「ゆきみち書房」を営む富永宰子さんにお会いしました。富永さんは地域の空き家問題に深い関心を持ち、その解決策を模索しています。そして町にあった空き家を1年かけて掃除し、ゆきみち書房を開業しました。コンセプトは、人と動物の共生や昔の生活への回帰です。便利さに溢れた時代において、富永さんはシンプルな暮らしを見直し、人間の心や精神を大切にしたいという強い想いが込められています。特に心を打たれたのは、富永さんが「次の世代に課題を残すのではなく、私たちの世代で解決しなければならない」と述べ、ゴミ問題に真摯に向き合っていることです。次世代に押し付けることなく、今の世代で解決するという富永さんの強い信念には感銘を受けました。そして、私たち一人ひとりが日々の生活を見つめ直すきっかけを与えてくれました。 

【8/28午後】下川小学校1年生 生活科

午後は小学1年生の生活科の授業に参加し、地域の方が学校の授業に携わっている様子を見ることができました。

どさんこ馬のハナちゃんとの授業は全部で3回あり、初回は「ハナちゃんは何を食べているんだろう?」というところから始まり、2回目である今回はより距離を縮めるために乗馬体験をしました。最初に小峰さんからハナちゃんの乗り方を教わり、その後1人ずつ乗馬をしました。私たちは午前中に乗馬体験をしていたので、小学生の乗馬のサポートを行いました。他の子が乗っている間はハナちゃんの歩き方の観察や、ハナちゃんへのお礼としてあげる草を集めていました。ハナちゃんに乗っている子どもたちはみんな楽しそうにしていて、乗り終わった後も楽しかった!と口を揃えて言っていました。ハナちゃんに触ると鼻と首では触り心地が全然違うということやハナちゃんの足の筋肉がすごい!など沢山のことに気づいていました。

子どもたちにとって、小峰さんのように学校の授業に協力してくれる方がいて、しかも馬を飼っている方と直接関わることができるのは、非常に貴重な体験であると感じました。地域の人々との交流を通じて、普段の授業では得られない学びや気づきを得る機会があるのは素晴らしいことだと思いました。

【8/29午前】下川中学校2年生 総合 センパイ進路トーク

4日目の午前中は下川中学校にて「センパイ進路トーク」を行いました。インターン生は、これまでの進路選択や当時考えていたことなどをまとめた「紙芝居」を作成し、中学2年生に向けて発表しました。後期に職場体験を控えた中学生は、それぞれがインターン生に向けての質問を準備し積極的にインターン生に質問をしていました。

インターン生それぞれが作成した「紙芝居」は、各々の人生の分岐点や進路の葛藤などインターン生がこれまで過ごした人生がぎゅっと15分間にまとめられていました。インターン生の経歴はさまざまで、多様な背景をもった人々がインターンに参加しているということを私自身も強く感じさせられました。

中学生からインターン生に対しては、今回のインターン生は留学経験者が大多数を占めていたこともあり、留学についての質問が多くなされていました。インターン生はそれぞれの経験などから、中学生の質問に対してできる限り真摯な回答をすることを心がけていました。下川町とは全く異なる土地から来たインターン生にとって、下川町の中学生が進路に対してどのようなことを考え悩んでいるのかについて深く知ることができる貴重な時間となりました。

授業のあとは、中学生と一緒に給食をいただきました。一緒の食卓を囲む中で、授業の時間では話せなかった生徒のホンネも聞くことができ、インターン生にとって大変学びの多い時間でした。

私たち自身は、中学生と関わる中で多くの学びを得ました。中学生にとって、人生の少しだけ「センパイ」としてのインターン生の対話が印象に残るものであればと思います。

【8/29午後】うどん祭りボランティア 準備

下川中学校で、進路トークをしたした後、うどん祭りへの準備を公民館にて行いました。7名のボランティア中学生と楽しく準備を行いました。

行ったこと
・トマト飴の試作
・トマト飴屋台のPOP作成
・うどん祭りのマップ作成
・ボードゲーム選び

まずはみんなで、トマト飴の試作を行いました。クロちゃん(昨年度のインターンシップ生)が出店するということで、クロちゃんに教わりながらトマト飴を作りました。最初はどうなるか不安もありましたが、初挑戦にもかかわらず、上手く仕上げることができました。POP作成(店の広告)では、試作したトマト飴を試食して感じた事をどのように書けばお客さんが立ち寄ってくれるかを考えながら書きました。

続いて、うどん祭りのマップ作成とボードゲーム選びをチームに分かれて行いました。マップ作成では、インターンシップ生と中学生が協力し、見やすく分かりやすいデザインのマップが完成しました。このマップは、祭り当日に来場者へ配布されます。

そして、ボードゲーム選びについては、たくさんのある中から5つの種類のボードゲームを選定しました。どの歳でも楽しく遊べるように、ルールが簡単なボードゲームから、心理戦をするゲームまで様々なタイプを選びました。ボランティアをしている中学生から、「これだったら楽しめる!」という声を参考にしながら学生を一緒に選定しました。
(選んだボードゲーム:はあっていうゲーム/Shishi Bar/ごきぶりポーカー/プロポーズの言葉を作る/トマトマト)

【8/30午前】 下川の森ツアー

まずは車に乗りながら、実際に林業を行っている森に向かいました。その車の中では下川の90%は森が占めていて、そのうち人工林はわずか20%ほどしかないといった話も伺いました。森に入る手前で一度下車し、そこでは「オオハンゴウソウ」という外来種の葉っぱと「ハンゴウソウ」という在来種の2種類の葉っぱを手に取りました。

ハンゴウソウは漢字で反魂草と書き、1,2週間で垂れた葉っぱの姿が死者の魂を手招きしているように見えることから名付けられたそうです。

 

上記の写真のように真ん中だけ虫に食べられている理由についても教えてもらいました。虫は柔らかい新芽の時に食べ、その跡が残ったまま切り絵のように最初に食べられたあとが広がっていきこのような葉っぱの形になるとのことでした。

そして森の入口から森の中へと車で移動しました。森の中にはトドマツという化粧品や下川町の虫よけスプレーにも使われているような木が生えていたり、クスサンという蛾の一種のまゆの殻を発見してそのまゆの固さを実際に触ってみたりしました。クスサンのまゆはほんとに割ろうと思っても全然割れない固さでほんとにびっくりしました。


(画像の左から順にトドマツ、トドマツの葉、クスサンのまゆ)

他にもいろんな森林が豊かならではの体験をさせていただきつつ、森についての経済的,社会的な側面についてもお話を伺えました。



【8/30午後】下川商業高校3年生 課題研究

昼食後は下川商業高校の3年生の課題探究の授業にお邪魔しました。
はじめに、インターン生を代表して2人がそれぞれ会社や団体を設立した経験について高校生に発表を行いました。その後、インターン生と高校生がいくつかのグループに分かれて、高校生がインターン生に対して各々が探究活動で取り組みたいと考えていることについて発表をしました。それを聞いたインターン生は、高校生の発表を聞いて感じたことを高校生にフィードバックしました。

グループのなかで聞いた高校生が探究したいことは多様で、高校生がそれぞれの関心や興味に応じた探究学習に取り組もうとする姿勢を見て取ることができました。また、インターン生自身も、探究に取り組もうとする高校生の姿を見て、自分が今取り組んでいることについて内省することができたように感じます。高校生が探究学習の枠組みとして用いていた「WILL(やりたいこと),CAN(今自分ができること),NEED(周囲や社会から求められていること)」の枠組みは、高校の探究学習の枠を超えて、将来も生き続ける考え方であると感じました。

【8/30午後】森林環境教育 森の生活 


NPO法人森の生活 代表 麻生翼さん

高校の探求授業が終わった後、NPO法人「森の生活」の代表理事を務めている麻生さんのお話を伺いました。麻生さんは下川町地域共育ビジョン策定に携わり、教育委員会からの委託を受けキッズスクールを実施するなど教育面での活動を行っています。また、教育以外にも市民参加の森の場づくりや起業家誘致の活動など多くの事業を手掛けています。今回は、特に下川町の環境教育についてお話を伺いました。

下川町では2009年から森林環境教育を実施しており、各学年に合わせた授業を展開しています。具体的には、算数の授業で「長さ」の勉強をしている小学生に対して、森林環境を活用した「森林の中で15cmの物を探そう!」というプログラムや、中学生が身の回りに欲しいものを下川町の木材を使って設計・製作するというプログラムなどを行っているそうです。

個人的に一番驚いたことは、各学年の森林環境教育の学習記録を残し、その学年がどのような学習をしてきたかが一目でわかるようにされていることです。麻生さんが記録を残すようになった理由の一つは、他の地域の人に取り組みを真似してほしいという願いからですが、結果的に、新しく下川町に赴任してきた教員が学生への理解を深めたり、学生自身が振り返りを行ったりすることにも繋がっているとのことでした。このような取り組みの結果、下川町の学生は他地域の学生よりも森林に対する理解が深まっているとのデータもあるそうです。


麻生さんのお話を伺っているときの様子

麻生さんのお話を聞いた後、私たちインターン生は「まちづくり」「生涯学習と森のつながり」「丸太の値段設定」など、様々なことを質問や対話をさせていただき、とても学びの深い充実した時間となりました。



【8/31 終日】 うどん祭りボランティア

全2日間あるうどんまつりの1日目は、中学生と一緒にボランティアを行いました。お祭りでの子どもたちの居場所の1つとしてボードゲームコーナーの設置と、トマトあめの販売を行いました。
トマトあめの発案者は中学生(当時)で、昨年度の議会発表にてこのアイデアが発表されていたそうです。そのアイデアに注目したクロちゃん(昨年度のインターン生)が、下川事業協同組合さんと協力し、このアイデアを実際の商品として実現することとなりました。
ボードゲームコーナーには沢山の子どもたちが来てくれました!中学生が小学生と一緒にボードゲームをして遊ぶ様子や、積極的にルール説明をしてくれる中学生の姿も見られてとても良かったです。最後に大学生と交流ができて良かったと言ってくれた中学生もいてとても嬉しかったです。
また1日目の夜に行われた「どんちゃんみこし」に参加しました!うどんのオブジェを載せたお神輿を担いで、祭りを盛り上げました。来場者からみこしに水をかけられるイベントもあって、たくさん水をかけられてびしょびしょになりましたが、それもまた楽しく、最高でした!

【9/2  終日】 下川小学校・中学校 1日防災学校

下川小学校にて、防災について学びました。

1限目:1年生 紙で作るコップ
2限目:2年生 ペットボトルとライトでランタンを作る
3限目:5・6年生と中学生2・3年生 災害時に役立つ道具や防災備蓄品の組み立て方法を学ぶ
4限目:ふるさとみらい創造堂による講座、避難所生活での困りごと、解決方法を考える話し合い
5限目:3年・4年 災害時に消防がどのような役割をするのか理解する
以上のことを行いました。


私たちインターンシップ生も、小学生のみなさんと一緒に防災について学ぶことが出来ました!

<1限・2限>
1・2年生は紙で作るコップやペットボトルとライトを使ったランタン作りに取り組みました。工作を通して、みんなが楽しみながら災害時に役立つ道具を作ることができました。インターンシップ生も、小学生と楽しく交流しながらサポートを行い、身近なもので災害時に使える道具を作る経験ができてとても良かったと思います。

<3限・4限>
5・6年生と中学2・3年生が合同で、災害時に役立つ道具や防災備蓄品の組み立て方法を学びました。災害時ベッドや簡易トイレの組み立て、応急処置、土嚢の作り方などを実際に体験しながら学びました。合同授業後の話し合いでは、「災害時に誰がどのような場面で困るのか」をテーマに、小中学生が意見を出し合い、解決策を考えました。インターンシップ生は、話し合いの進行をサポートし、フィードバックを行うことで、良い学びの場を作るお手伝いをしました。自ら発言したり発表したりする姿勢はとても素晴らしい姿勢であり、協働ワークを良いものにする良い機会になったと思います。

<5限>
3・4年生は、消防やAEDの使い方について学びました。実際にAEDを使ってみたり、他学年が作成した災害時ベッドや簡易トイレを模擬体験したりしながら、防災について楽しく学ぶことができました。また、消防士の方による講義では、クイズ形式でドクターヘリや総合医療センターのドクター救急車について学びました。

この防災教室を通じて、小中学生とインターンシップ生が協力し合い、災害時に必要な知識とスキルを楽しく学ぶことができた素晴らしい機会となりました。



インターンシップに参加して感想&次期インターン生へのメッセージ

・知らない世界が見れた!
・自然溢れる地で下川の充実した教育システムを学べます!
・子どもたちとの関わりだけでなく、地域の人ともたくさん交流できます。地元の人たちと話したり、その方の生活を知ることで、自分がこれからどう生きていきたいかを考えるきっかけが得られました。下川の温かいコミュニティの中で、自分の視野も広がり、将来のヒントがたくさん得られるのがこのインターンの魅力です!
・インターンを通して、人口減少社会における地域コミュニティのあり方や、都市部ではない地域の教育について考えることができました。教育のみならず地域社会の持続可能性など、多くの視点から学びを得ることができるため、「教育」や「地域」といった言葉に関心がある方はぜひ参加をおすすめします!!



次回のインターン実施は2025年2月頃、募集を2024年12月頃を予定しています。